このたびMAKI Galleryは、ロサンゼルスを拠点に活動するカズ・オオシロの個展を開催いたします。本展は、天王洲のTERRADA Art Complex 1階にオープンするMAKIのグランドオープンに併せて開催されます。
オオシロは、1986年にロサンゼルスに渡り、そこで美術教育を受け、作家活動を行ってきました。(添付;カズ・オオシロ「ティンゼルタウンからの手紙」より)以来、彼はアメリカ西海岸の文化のなかで、その変遷とともに作品の在り方を模索し、長い美術史において表現の限りを尽くし、何度も存在の危機にさらされてきた絵画の意味を問い続けています。
本展のタイトル「Republic」は、古代ギリシャの哲学者プラトンの著書(日本語タイトル『国家』)であり、そこにはプラトン独自の国家論について言及されると同時に、物事の本質、とりわけ真の善や美、いわゆるイデア論についても語られています。プラトンは、いかに私たちが物事を表面的にしか見ていないかという点について、“洞窟の中に閉じ込められた囚人は、洞窟に映る影絵のようなものだけしかみたことがなく、それが実体だと思っています”と説きます。私たちが賞賛してきた芸術もまたそうであったのではないか、とオオシロは問います。芸術そのものではなく、芸術らしいフォーマットを私たちは賞賛しているのではないのか、と。どこから見てもアンプであり、キャビネットであり、アタッシュケースにみえる作品はʻ洞窟に映る影絵ʼで、裏に回って露わになったキャンバスの木枠を見たときの衝撃によって、観る者の目を洞窟の外に向かわせます。そこから人間の目では見ることのできない、本質を求める思想の探求が始まるのです。
さらにオオシロは、『国家(Republic)』で語られる社会的な芸術の受容についても疑問を投げかけています。―“グローバルに肥大化したポリティカル・コレクトネスの第二波が社会全体を覆う今、その状況を横目で無視を決め込んでいた作家達までをも無情にも飲み込み、プラトンの危惧していた状況、芸術が社会正義の名のもとに武器として使われる。皆、無自覚な状態のままで。それも随分と世界各都市に広がっただろう。歴史は韻を踏むように螺旋状に何度となく繰り返されるのである。”(添付;カズ・オオシロ「ティンゼルタウンからの手紙」より)
本展は、MAKI Gallery /天王洲, 東京 の最初の展覧会となります。芸術に対する視点・立場を根本から考える場としてMAKIをオープンするにあたり、その記念すべき最初の展覧会に、芸術、とりわけ絵画の在り方を問うカズ・オオシロはもっともふさわしいアーティストだといえるでしょう。本展のために作家のスタジオより秘蔵の作品をラインナップに加え、これまでの制作活動を俯瞰できるよう紹介してまいります。芸術の本質を探るきっかけを与え、社会においてそれがどのように捉えられていくのかを問うオオシロの作品。天王洲のギャラリー空間にダイナミックに展示されるスピーカー、キャビネット、「Still Life」シリーズ、「Steel Beam」シリーズなどの代表作を、ぜひ皆様にご高覧いただければ幸いです。
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Shinagawa-ku
Tokyo, 140-0002
Japan
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Tues - Sat, 11:30am - 7pm