ペロタン東京はこのたび、フランス人アーティスト、ジャン=ミシェル・オトニエルによる新作の個展を開催いたします。同アーティストの日本でのギャラリー展は今回が初となります。本展では、初公開となる新シリーズであるガラスの立体作品や、金箔を用いた絵画作品が展示されます。
2012年に原美術館にて開催された回顧展以来初となる日本での個展において、オトニエルは静観的なアプローチで自然の探究を続けており、抽象的で五感に訴えかける作品を提示します。《Kiku》は菊花や、日本の古典文化における菊の象徴的意味にインスピレーションを得た作品です。
このインスタレーションでは、立体作品が尊く神聖な護符として、カリグラフィーの絵画が聖像として展示されます。オトニエルはペロタンのギャラリー内に自身が「夢路」と名付けた夢の世界である、菊の花が咲く閉ざされた禁断の園を再現するのです。西暦900年代の日本において編纂された歴史的な和歌集である『古今和歌集』や『後撰和歌集』に登場する「夢路」という言葉には、「夢をみる」と「愛する人と夢で逢う」という二重の意味があります。
自身の展覧会を「夢路」と名付けることで、オトニエルはそのロマンチックな世界観を覗かせるとともに、感情への鍵となるのは花のような素朴なものであることや、それが空想と想像への«夢の路»であることを指し示しています。これは私たちを取り巻く驚異的な物事に気付かせる、ひとつの世界の見方といえるでしょう。オトニエルにとって、現実とは、象徴と驚異の絶え間ない源なのです。
「菊の花は日本で最も重要で象徴的な花のひとつだといわれています。忍び寄る冬もよそに、秋に咲く花として知られ、長寿と若返りの象徴となりました。周囲がすでに眠りにつき始めているにも関わらず、驚異的に闘い、あらゆる困難を物ともせず咲く花という考え方をとても気に入っています。一年の間で最も遅く咲く花のひとつです。」ジャン=ミシェル・オトニエル
元来、菊は薬草として8世紀に中国から日本へと伝来し、平安・鎌倉時代には不老長寿の象徴として皇室や公家、武家が愛でたといわれています。かつて、菊が9月の開花期を迎えると、人々は夕方菊花を布で覆い露を集め、翌朝その芳しい濡れ布で身体を拭くことで精神を浄化させ、長寿を祈りました。この習慣に基づき、菊と露の組み合わせは和歌をはじめとする古典文学に繰り返し登場するモチーフとなりました。こうした作中では、菊花の«永遠の命»は、脆く儚い人生への対比表現として、愁いとともに美化されています。
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