ペロタン東 京はこのたび、ロサン ゼルスを拠 点に活 動するフランス人アーテ ィスト、クレア・タブレによる新 作ペインティングの個展を開催いたします。本展では、ロックダウン(都市封 鎖 )のさなかに制作された、タブレ自身の 個 人 的な 姿 を描いた 新 作 セルフ・ポートレイトのシリーズを発表いたします。
日本初の個展となる本展では、一連の作品《Lockdown Self-por trait s》を通して、タブレの 視 線 が 鑑 賞者ではなく内 側を向いていることが示されます。タブレはこれまで、二 人 以 上の人物らの関 係 性に焦 点を当てた 作 品 を 数 多く制 作してきました 。しかし 、昨 今 の 世 界 情 勢 を 受け、人々が集う機 会が減ったことから、タブレは自分自身と鑑賞者との間のダイナミクスに焦 点を当てました。セルフ・ポートレイトは、10 年ほど 前からタブレの活 動の重 要な部分を占めていますが、この非自発的な孤 立 感という現状を受け、必 然 的に自分自身を被写体とするようになりました。タブレは、フィンランドの人 里離れた田舎に住んでいたヘレネ・シェールフェックが、他にモデルがいないときによく描いていたという非常に個 人 的な自画 像に影 響を受け、「絵を描きたいという衝 動は何があろうと常に存 在しているので、自分自身を描き始めたのはとても自然なことだった」と振り返っています。
タブレの作 品に登場する人物らにとって、化 粧や衣 装などの要 素は言 わば“ 鎧”の役割を果たすことが多く、それらを用いて鑑賞者から特定 部分を隠すことで、確たる自信を示すことを可能としています。これら の 新 作 セルフ・ポートレイトから大 胆 不 敵さは 消 滅していないものの 薄 れ 、その“盾 ”はより緻 密に存 在しています。特 大のローブ、フード付 きのスウェットシャツ、愛 犬のジョージは、タブレと鑑賞者の間に断固として立ちはだかるのです。また、ヴュイヤールの見事なインテリア ― 人物が室内のファブリックや模様に飲み込まれそうになっている様 ― が 想 起されます。タブレの新 作からも、重 厚感 がありながらも家 庭 的な暖かさと安堵感を持ち合わせた、同様の雰 囲気が感じ取れます。厚手のストライプ 柄のバスローブを描いた作品は、マティスのオダリスク絵 画 を 連 想させ、フードを被った自 画 像 は 、ズ バラン の 僧 侶 の 絵 画や、ガタン・ガティアン・ド・クレランボーによる何 千枚もの ベール をかぶった女 性の写 真を連 想させます。これらの 覆いは 、まるで 子宮のようであるとともに、避 難 所としての役 割を果たし、消えてしまいたいという作 家の 衝 動を表 現しています。卓 上の自画 像においては 、手で顔を隠し、目を逸らすことで 鑑 賞者を避けています。マネの《ラ・プルーン》に倣い、タブレは「内向きになっているこの特別なまなざしを見つけたい」という願 望を呼び起こします。
タブレはこれらの ペインティングの 他にも、新 作モノプリントのシリーズを発表します。タイトルが 指し示す通りすべての作品がユニークですが、特にその制 作プロセスの 性 質 上、描かれたひとつひとつの 絵に直 前の“ 残 像 ” が 含まれています。すべ ての 作 品 は 前 作 へ の反 応 であり、モチーフの 繰り返しが展 覧 会 全 体に音 楽 的なリズムを生み出す 様を、タブレはジャズの即興演奏に例えています。これらの連 続した自画像は 、ペインティングの 構 図を模したものでありな がら、特異 な逸 脱性を保っています。一 体となったペインティングとモノプリントは、鑑賞者に自身が見たものの記憶を問うよう促します。
タブレは作品の中で自身が 唯一の被写体であるにもかかわらず、鑑 賞者の前から引き下がっていることは明白であり、まるで完全に消えてしまう一 瞬 手前のように描 写されています。その表 情は同じようで 一様ではなく、時間の経 過とそれに伴う人間の顔の儚さを称えています。これらの作品は、制 作時の時 勢の不 確 実性を反映しており、いつ変 化してもおかしくない一時的な感覚を表現しています。タブレは「今ここに存在していることへの不安感があり、それが作品に反映されている」と説明しています。
クレア・タブレは1981年フランスのペルチュワに生まれる。パリのÉcole des Beaux-Artsにて学士号を取得、2005年にはニューヨークのCooper Unionに学ぶ。現在はロサンゼルスを拠点に活動している。
最近の個展には、2021年1月10日まで米国オレゴン州ユージーンのJordan Schnitzer Museum of Artにて開催中の「Mirrors and Reflections」、Musèe des Beaux Arts de Rouen(フランス)で開催された「La Ronde」などがある。最近のグループ展には、バルセロナのCaixaForum(2021年1月21日まで)、ラトビア・リガのZuzeum Ar t Centre、モントリオールのAr senal Contemporary Art、マドリードのCaixaForumなどがある。
Collection Lambert(アヴィニョン、フランス)、Villa Medici(ローマ)、ユズ美術館(上海)、Palazzo Fruscione(サレルノ、イタリア)、The Drawing Center(ニューヨーク)、Hangar à Bananes(ナント、フランス)、Palazzo Grassi(ヴェネツィア)、Maison Guerlain(パリ)、Galerie du Jour Agnès b(パリ)などの数多くの美術館にて展覧会を開催。
タブレの作品はLACMA(ロサンゼルス・カウンティー美術館)、モントリオール美術館、Arsenal Contemporary Art(モントリオール)、Pérez Art Museum(マイアミ)、ピノー・コレクション、ユズ美術館(上海)、FRAC Auvergne(フランス)、FRAC Haute-Normandie(フランス)、Agnès b Collection、Foundation Colas(パリ)、Collection Emerige(パリ)、Leuwen Foundation(ベルギー)、Zuzāns Collection(リガ、ラトビア)、Fondazione Fausto Melotti(ミラノ)など、主要なコレクションに収蔵されている。
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Exhibition view: Claire Tabouret, Lockdown Self-portraits, Perrotin, Tokyo (19 November–26 December 2020). © Courtesy Almine Rech and Perrotin. Photo: Kei Okano.