ペロタンとカスミンはこのたび、米国人アーティスト、マーク・ライデン(1963 年米国生まれ)による新作の展覧会を共催いたします。本展「Yakalina 9」は 2022年4月1日から5月14日まで、ペロタン東京にて開催されます。謎に包ま れた存在であるYakalina(ヤカリーナ)のブロンズ彫刻とドローイングの新シ リーズを含む本展は、5月にペロタンパリにて開催予定の展覧会「Animal Secrets」を構成する要素として着想されました。
マーク・ライデンの想像力に富んだ芸術的行為は、意味や含蓄を幾層にも重 ねながら体現されています。その優美な絵的表現から豪華に装飾された額に 至るまで、ライデンの創造は技巧と洗練された物質性への頌歌なのです。また 同時に、ライデンは目に見えない、宇宙の秘められた秩序を深く考察し、霊的 な真髄に満ちた存在を解釈しています。ライデンの作品は、その隠喩的な景色 に息づく要素の象徴的な意味を探求しながら、神秘的でときに不可思議な世 界への畏怖の念を呼び起こすものです。
「Yakalina 9」では、ライデンの近作である神秘的な動物の彫刻とドローイン グが展示されます。ヤカリーナの体は細長い円すい形で、顔を除く全身は毛皮 で覆われ、愛らしくも不気味な姿をしています。このように両腕を広げた人間 や神の姿は崇拝や敬神を象徴する表現で、青銅時代から永続する伝統的な図 像です。初期キリスト教徒によって取り入れられたオランス(祈る人)のポーズ は、ローマ・カタコンベのフレスコ画にみられる祈る人々の姿から、「しるしの 聖母」としてビザンチン美術のイコン(聖像画)やモザイク画に描かれた聖母 マリアに至るまで、さまざまな古典的宗教美術に繰り返し登場しています。こ のシンプルでありながら力強い表象は、物理的な形状の限界を超え、崇高な 事象を表しています。ライデンは、そのプラクティスでたびたび扱われる題材 「Anima Animals」(アニマ・アニマルズ)と崇拝のイコノグラフィーを結びつ け、自身の芸術的表現を通して再考しています。これらの像がきっかけとな り、鑑賞者を未知なる世界へと導き入れ、創造的な精神を引き出すとともに、 私たちと自然や神性との繋がりを再発見させます。ライデンは「あなたが望む なら、アニマル・スピリットはあなたの元を訪れます。目を閉じ、心の内側に目 を向け、あなたを導く動物に呼びかけたら、目を開け、来訪を待つのです」と語 ります。
今回、彫刻と並んで展示されるのはヤカリーナのドローイングで、そのビジュ アルは錬金術の古写本を思わせます。作品にみられる、シンボル、錬金術記 号、構造、数字などを駆使した知性的な行為は、手ほどきを受けざる者には近 づくことのできない、秘めた秩序を示しています。ヘルメス文書のごとく、ライデ ンによる一連の作品の本質は不明瞭です。しかし、必ずしも解読する必要のな い芸術的な試みを熟考する瞬間こそ、物理的な形状から浮かび上がる無形の 現実に遭遇する驚嘆の感覚を呼び起こすのです。
人類の歴史において、肉体と精神、有形と無形、可視と不可視といった二分法 の哲学的言説は、繰り返し浮上してきました。それにもかかわらず、私たちの世 代は今日の大衆文化の広範囲にはびこる物質性にとらわれ、科学や技術の成 果を第一に盲信しています。未知で無形の領域に属するものをどのように捉 えるかという本質的な問いは、個人レベルに委ねられます。未知のものを理解 するためには、合理的ではなくむしろ想像力に富んだ、異なるものの見かたが 必要とされるのかもしれません。だからこそ、ヤカリーナは現代という文脈に おいて霊的な存在を想起させながら、なおも秘密に包まれています。
目を開いていれば、どこにでも神性な顔を見いだせるのです。- マーク・ライ デン
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